逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「仮にエステリーゼ嬢がお前を受け入れたとしても、こちらから一度断りを入れた以上、ウォルトン伯もすぐに頷くとは考えにくい。苦難の道とわかっていて、あえてその道を選ぶと?」
「もちろんです。どんなに困難だとしても、俺は彼女を選びます」
「…………そこまで決意が固いのであれば、もう何も言うまい。決して無理強いはせず、やれるだけやってみなさい」
「はい! 失礼します」

 無事に父上から言質を取れたことで、退室の足取りも軽くなる。
 ドアを完全に閉めてから両拳を突き上げた。

 ◆◇◆

 彼女の名前がわかってから、俺はすぐに動いた。
 公爵家の情報網を駆使して彼女が出席するお茶会の日程を調べ、帰る時間を逆算して先回りした。お茶会帰りの他の令嬢が、道の横に立っている俺に気づいて早足で帰る中、エステリーゼは一人楽しそうに歩いている。
 彼女以外の令嬢が皆いなくなるのを見届け、道の真ん中で腕組みをして待ち構える。やがてエステリーゼがようやく俺に気づいたように立ち止まった。
 無言のまま視線が交差し、今の状況に気づいた彼女の顔が瞬時に驚きに染まった。
 俺はできるだけ彼女を刺激しないよう、ゆっくりと歩みを進めていく。

「……やっと、見つけた」

 毎日毎日、君のことをずっと考えていた。
 再び会える日をどれだけ待ちわびていたことか。もう逃がしはしない。