逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「つまり、何もしなくとも婚約できたはずなのに、お前はその機会をふいにしてしまった。実に残念だ。ウォルトン伯は誠実な方だ。一度こちらから断りを入れておいて、再び婚約の申し出をするのは誠実に欠ける行いだ。賢いお前なら、この意味がわかるだろう?」
「…………」

 みるみるうちに絶望に染まる心に、労るような声が続く。

「諦めなさい、ジュード。きっと縁がなかったのだ。他にも令嬢はいる。この先、いつかジュードが好きになる令嬢と出会えることもあるだろう」
「…………せん」
「なに?」
「俺は諦めません! 必ず彼女を振り向かせてみせます」
「振り向かせて……? ま、まさか、お前が好きになってもらうようにアプローチするのか? これまで数々の令嬢を泣かせてきたお前が!?」

 驚愕した様子で確認をする父上の姿は無理もない。これまで俺がしてきた、異性に対しての態度は褒められたものではなかった。
 俺自身、こんな風に変わる日が来るなんて、信じられない気持ちだ。

「今までの俺は愚かでした。過去は変えられません。しかし、未来は違います。これからは女性に対して誠意を持って対応することを誓います。ですから……どうか俺にチャンスをください」

 自分の拳を握りしめて切々と語ると、父上は悩ましげに腕を組んで唸った。