許可を得て入室すると、黒檀の執務机で書類を捌いていた父親が顔を上げる。
机の両端には書類の山が積み上げられている。
これは手短に済ませなければならないな、と俺は早速話を切り出した。
「父上。ご報告があります」
「……先日の件か?」
「はい。彼女の名がわかりました。ウォルトン伯爵家の一人娘、エステリーゼ嬢です」
俺が名を告げると、父上は目を見開いて硬直した。
かと思えば、眉間に刻んだ皺をほぐすように指先を当てながら、地を這う声が返ってきた。
「ちょっと待ってくれ。お前が見初めたのはエステリーゼ嬢だった、ということか?」
「そうです」
なんてことだ……とつぶやきながら父上は天井を仰ぎ見た。
その姿は、オペラで信じがたい光景を前に悲嘆に暮れる役者のようだった。
「あの……?」
俺が声をかけると、遠い目をしていた父上がハッとした様子で向き直り、視線が交わる。大きく咳払いしてから、父上は厳粛な面持ちで告げた。
「ジュード。よく聞くんだ。あの日、園遊会で婚約者として顔合わせする予定だった令嬢は、エステリーゼ嬢なのだ」
「は……?」
机の両端には書類の山が積み上げられている。
これは手短に済ませなければならないな、と俺は早速話を切り出した。
「父上。ご報告があります」
「……先日の件か?」
「はい。彼女の名がわかりました。ウォルトン伯爵家の一人娘、エステリーゼ嬢です」
俺が名を告げると、父上は目を見開いて硬直した。
かと思えば、眉間に刻んだ皺をほぐすように指先を当てながら、地を這う声が返ってきた。
「ちょっと待ってくれ。お前が見初めたのはエステリーゼ嬢だった、ということか?」
「そうです」
なんてことだ……とつぶやきながら父上は天井を仰ぎ見た。
その姿は、オペラで信じがたい光景を前に悲嘆に暮れる役者のようだった。
「あの……?」
俺が声をかけると、遠い目をしていた父上がハッとした様子で向き直り、視線が交わる。大きく咳払いしてから、父上は厳粛な面持ちで告げた。
「ジュード。よく聞くんだ。あの日、園遊会で婚約者として顔合わせする予定だった令嬢は、エステリーゼ嬢なのだ」
「は……?」



