逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

(彼女の婚約者にふさわしい立派な男にならねば。他の貴族令嬢にも紳士的に接しなければ、きっと見向きもされない。彼女から婚約したいと思われるような男になるんだ……!)





 俺と同じくらいの身長ということは、彼女は同い年か年上だろう。
 あの園遊会に招かれたのは子爵家以上の貴族の娘だけだ。
 深緑の波打った髪に、つり目がちな檸檬色の瞳。そして、人の輪には加わらないような、おしとやかな性格の令嬢。
 けれど、その条件に一致する人物は誰一人いなかった。

(これは一体どういうことだ……? 君は一体、何者なんだ?)

 もしかしなくとも、何か大きな見落としがあるのではないか。
 貴族令嬢という条件で探していたが、まさか使用人と服を取り替えたわけではあるまい。そんなことをしてもメリットなど何もないのだから。
 リストを書き連ねた羊皮紙を眺めながら俺は嘆息した。

(名前もわからないままでは再会もできない。婚約だって申し込めない)

 園遊会の招待客の令嬢リストは、俺の婚約者候補のリストでもある。
 この中に俺の婚約者になる予定だった令嬢がいるのだと思うと見るのも億劫だが、公爵家嫡男である以上、政略婚姻は避けられない。そう思っていた。――彼女に会うまでは。

(招待客の従姉妹まで範囲を広げて調べたのに該当者がゼロとは……。もしや俺は妖精にでも会ったのだろうか? だから会えないのか……?)