逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「そのときは当初の予定通り、父上が決めた令嬢と婚約します。ですから、どうか俺に猶予をくれませんか。必ず探し当てます。そして婚約の話を受けてもらえるよう説得します」

 今まで貴族令嬢を毛嫌いしていた俺の変わりように、さすがの父上も面食らったようだ。
 しばらくの間を置いて、大きなため息が続いた。

「…………お前がそこまで言うのだから、よっぽどいい出会いをしたのだな。わかった、婚約の話は私に任せなさい。その代わり、いい報告を期待しているぞ?」
「もちろんです。くだんの令嬢が見つかった暁には、すぐにご報告します」
「ならば、この話はいったんしまいだ。公爵令息として社交に励んできなさい。皆、お前が来るのを待っているぞ」
「はい」

 くるりと踵を返し、俺は園遊会の人の輪に加わる。
 今までは苦だった社交だって立派にこなしてみせる。先ほどの彼女だって、今もどこかでこの会場を影ながら見守っているはずだ。みっともない真似は見せられない。
 それに彼女に婚約の話を了承してもらわねばならない。ならば、早急に実績作りが必要だ。まずは人脈を作ることから始め、公爵令息として紳士的な振る舞いも身に付けなければ。
 俺が変われば、その噂はいつか彼女の耳にも届くだろう。