逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「実はお前の婚約者はもう決めてある。だから今日は顔合わせをした後、この園遊会で婚約を大々的にお披露目する予定なのだ。もう先方とは話をつけてある。……ちなみにジュードが見初めた令嬢の名は?」
「……すみません。名前までは知りません。ですが、貴族令嬢であるのは間違いないはずです。彼女の身元はこれから調べる予定です」
「名前もわからないのでは判断のしようがないな。残念だが――」

 父上の言葉の先を読み、俺は焦って言葉を被せるようにして言い募る。

「その婚約の話、どうにかしてなかったことにできませんか? 先ほどの口ぶりでは、まだ公式には発表されていないのですよね。でしたら、父上なら水面下で婚約を白紙に戻すことも可能でしょう。お願いします! できれば、俺は彼女を将来の妻にしたいと考えています」
「妻? 妻と言ったか? 気は確かか?」
「失礼ですね。俺は本気です。最初は結婚相手など、誰でも同じだと思っていましたが、今は違います。結婚するなら彼女がいいです」

 俺の本気さが伝わったのだろう。
 父上が考える素振りで顎に手をやり、ううむ、と唸った。

「だが……名前も知らない令嬢なのだろう? もし見つからなかった場合、どうする気だ?」