逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 行方不明の令嬢も解散する時間になれば自分から姿を現すだろうし、五歳の令嬢なら、自分の家のように遊び感覚で姿を消した可能性も高い。
 そうと決まれば善は急げだ。俺は早速、父上に報告に向かった。
 執事と何かを相談していた父上は俺に気づくと、すぐに話を切り上げてこちらに駆け寄ってきた。

「ああ、ジュード。彼女は見つかったか?」
「……いえ、見当たりませんでした」
「そうか。まぁ、日暮れ前には見つかるだろう。……どうした?」

 この気持ちをうまく言葉できず、俺はとっさに父上の袖をつかんでいた。父上は俺の幼稚な行動を叱るでもなく、心底不思議そうな顔で俺と視線を合わせた。

「お願いが……ございます」
「うん? お前が改まってお願いなんて珍しいな。内容にもよるが、とりあえず言ってみなさい」
「その、先ほど婚約を申し込みたい令嬢と会いました。どうか彼女との婚約の許可をいただけないでしょうか」
「………………」

 父上は絶句したようで、石像のように固まってしまった。
 だが、その反応も無理もない。俺は散々、これまでのお茶会で数々の令嬢に暴言を吐くか、わざと怒らせるか、泣かせるかしてこなかった問題児だった。
 けれども、さすがは筆頭公爵家の当主だ。父上は数秒後には当主にふさわしい、凜々しい顔つきに戻っていた。そして、少し申し訳なさそうに眉尻を下げて言った。