逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「ウォルトン伯爵家のエステリーゼ嬢が見つからないらしい。まだ五歳の女の子だ。屋敷の外に出た様子はないから、おそらく迷子になっているのだろう。ウォルトン伯もあまり大事にはしたくないと言っているし、挨拶回りしながらでいいからお前も探してくれないか」
「わかりました」

 幸い屋敷の中には入っていないようなので、内心ではすぐに見つかるだろうと踏んでいた。だが、どこを探しても行方不明の令嬢は見つからなかった。

(ふむ……あと探していない場所は、人が隠れるような茂みだが……)

 挨拶回りはひとまず後回しにし、俺は人の少ないエリアを中心に歩いて回った。
 すると、一人の女の子を見つけた。
 身を低くして、微動だにしない。もしや具合が悪いのかと思ったが、しばらくして彼女は茂みから顔をちょこんと覗かせて園遊会の様子を必死に観察し始めた。
 その素振りを見るからに、どうやら体に異変はなさそうだ。
 そのことに安堵しつつ、彼女を観察する。背丈は俺と同じか、俺より少し高いぐらいか。長い髪の後ろにあるリボンは年相応の大きさで、もしかしたら招待客の親族がお茶会に憧れてこっそり紛れて来たのかもしれない。よくある話だ。
 五歳の令嬢なら、もう少し身長は低いはずなので、行方不明の令嬢は彼女ではないだろう。

(しかし、すごい集中力だな。一体、そこまで集中して何を探しているのだ?)