逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「俺が素直になれなかったばかりに……もっと早く彼女に許しを請うていれば。いやもう、何もかも遅い。そもそも結婚してから謝罪すれば、いつか許してもらえるなんて考えが浅ましかったのだ。天空神もそれを見抜いておられたのだろう。つまり、エステリーゼは不幸な花嫁にならずに済んだわけだ」
「落ち着いてください。エステリーゼ様の事故はジュード様のせいではありません。そのようにご自身を責めてはいけません」

 キールが優しく諭してくれるが、心の闇は膨れ上がる一方だった。
 結局、結婚式を迎える日まで、俺はエステリーゼに自分の本音を伝えられずにいた。
 彼女は一体、どんな気持ちで馬車に揺られていただろう。気丈に見せていても、内心では俺との結婚生活に不安を抱いていた可能性は充分にある。
 もしかしなくとも、自分は不幸な花嫁だと感じていたのではないだろうか。
 仮にこの予想が当たっていたとしたら、エステリーゼは死ぬ間際、一体何を考えていただろう。死の怯えよりも、俺と結婚せずに済んでよかった、と思っていたかもしれない。

「――俺のせいだ。今までどれだけ彼女を傷つけてきた? 優しく笑いかけることもできず、本心とは真逆な言葉を吐き捨てるように言い、彼女を散々侮辱してきた。そのくせ、彼女に近づく他の男に威嚇してばかりの狭量な男だ。こんな男の元に嫁がないほうが幸せに決まっている……」
「ジュード様……」