逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 彼らは表と裏の顔を使い分け、国に忠義を尽くしている。
 次男であるルカは家督こそ継がないが、すでに有能な働きをしていると耳にしている。
 もともと美形の家系だからか、令嬢たちの中には彼のだだ漏れの色気にあてられ、失神する者もいるとかいないとか。本人はその美貌を最大限に活かし、複数の女性を伴うことが多い。
 俺には冷たいエステリーゼもこの男の前では、楽しげに笑うこともある。しかも、それは一度や二度ではない。
 柔らかな物腰で相手を油断させるのはルカの十八番だが、正直面白くはない。

(……思い出したら腹が立ってきたな)

 甘い言葉ひとつで数々の女性を籠絡してきたルカは、俺とは真逆のタイプだ。
 俺は必要に迫られない限り、異性に優しく接することはない。困っている場合は紳士らしく助けることもあるが、必要以上に関わることはまずない。
 だがルカは「身分や年齢を問わず、すべての女性を平等に優しく」を信条に自分から率先して動く。俺には到底理解できないが、わざわざ贈り物を別々に準備して相手を喜ばせる。金額から考えれば、ささやかな贈り物であっても、自分のために選んでくれたところが評価されているらしい。
 とはいえ、ルカの女性に対する守備範囲は広すぎる。そのうち、醜い嫉妬心に駆られた女性に刃物を向けられる日が来てもおかしくない。