逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 いつもはもう少し控えめなデザインを好んでいたと思うが、一体どういう心境の変化か、扇情的なデザインだ。美しいとは思うが、正直に言ってしまえば、この姿を他の男の前にさらすのは強い抵抗がある。
 しかしながら、俺の口はいつも本音とは違う言葉を吐き出す。

「ダンスではせいぜい足を引っ張る真似はしないでくれ」
「――わかっているわ」

 そもそも、俺の褒め言葉なんて端から期待していなかったのだろう。エステリーゼは特に落胆した様子も見せず、清々しいほど普段通りだった。

 ◆◇◆

「よぉ。こんなところで奇遇だな?」
「……ルカ。なんでお前がこんなところにいる?」
「何って、女の子たちへのプレゼント選びだよ。その子に合った花を一輪ずつ選んでいるんだ」

 銀髪碧眼の男は、伊達眼鏡を胸ポケットに片付けて口の端をつり上げた。
 彼の名はルカ・ウェンデル。建国から代々続く名門ウェンデル伯爵家の次男だ。
 家格は伯爵家だが国王陛下からの信頼は厚く、議会からも一目置かれている家だ。彼の祖先や現当主は本来なら公爵になってもおかしくない働きをしているが、表立って活躍するのをよしとしない家風のため、今も伯爵位に留まっていると聞く。
 それもそのはず、代々ウェンデル一族は国の忠犬――国王直属の諜報機関という役割を担っている。今では、その事実を知るのはほんの一握りだが。