逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「……まぁ、最初は戸惑うかもしれませんが、よもやこのまま隠しきるつもりではないでしょう? 結婚すれば、いつかは話すときが来るのです。なら、それは早いに越したことはありません」
「う……」
「ジュード様、どうか諦めないでください。必ず、チャンスはやってきます。そのときはエステリーゼ様と話し合い、これまで押し隠してきた本音を打ち明けてみてください」
「……ぜ、善処はする……」

 口げんかしかできていない現状で、一体いつ、そのチャンスがやってくるのかは不明だが。

(とはいえ、キールの言葉にも一理ある。諦めたらそこでおしまいだ。諦めずにあがいていたら……いつか天空神からもお慈悲が賜れるかもしれない)

 そうだ。諦めるのは時期尚早だ。
 幸い結婚までの時間的猶予はまだある。すぐには無理だが、少しずつなら歩み寄れるかもしれない。彼女が俺の婚約者でいるうちに、なんとかエステリーゼの心を射止めなければならない。
 彼女が親しい者に優しく微笑むように、いつか俺にも同じ笑みを向けてほしいから――。





 エステリーゼが赴く夜会は常にエスコートしているが、何度やっても慣れることはなかった。毎回、初めてのように心臓はずっと騒ぎっぱなしだ。