逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 カッとなって言い返してから気づいた。

(違う。キールは悪くない。俺が心を入れ替えて誠実に接すれば、エステリーゼだって話ぐらい聞いてくれるはずだ。相手がどんな身分でも困っている人がいれば手を差し出すような女性だ。……そんな彼女を頑なな態度にさせている原因は考えるまでもない。全面的に俺に非がある)

 最初の出会いで、精一杯着飾った彼女をけなさなければ。
 毎回人をばかにしたような表情で、本音と真逆の言葉を投げかけなければ。
 公衆の面前で、彼女を悪く言わなければ。

(いや……仮に時が戻っても、きっと俺は同じことをするに違いない。あの頃の俺は、異性に対して辛辣な言葉しか吐けなかったのだから)

 だとすれば、どうあがいたところで結果は同じではないだろうか。
 思考の海に溺れていると、キールの優しい声で現実に意識が引き戻される。

「…………もういっそ、すべてを包み隠さず本音をさらけ出してみてはいかがですか? あちらのプレゼントの山とともに」
「な、何を言い出すんだ。そんなことをすれば、彼女は明らかに引くだろう!」

 俺が強く抗議すると、キールはそっと視線を横にそらした。
 おそらく俺が思い描いた未来が想像できたのだろう。キールは咳払いで誤魔化し、話を続けた。