逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

(エステリーゼに告白する勇気がない俺には、プレゼントを渡す資格もない……)

 今日のために作らせたのは、世界でただ一つの宝飾品だ。
 これだけ手間暇かけて用意したのだから、渡せばきっと喜んでくれると思っていたが、まずその考えが傲慢だった。
 そもそも嫌っている相手からの贈り物など、喜ばれるはずがないというのに。

(俺は……愚かだ)

 毎度素直になれないばかりか、彼女を怒らせることしか言えない。
 この関係が変わらない限り、エステリーゼとわかり合える日なんて永遠に来ないだろう。

 ◆◇◆

 俺は失意のまま帰宅し、まっすぐ自室へ向かった。
 クローゼットを開けると積み上がった箱の山と目が合う。俺は他の箱の下敷きにならないよう、今日渡すはずだった細長い箱を、一番下の隙間にそっと差し込んだ。
 そして、記憶に蓋をするようにクローゼットの扉を片手で閉める。

「ジュード様……。クローゼットは本来、服をしまう場所です。婚約者のプレゼント保管場所ではないのですが」

 メイドから渡されたお茶一式を受け取っていたはずのキールはすでにお茶の準備を済まし、こちらを気遣うような目を向けていた。

「…………仕方がないだろう。渡せなかったのだから」
「そうですね。ジュード様は今回もなんとか渡そうと頑張っておいででした」

 さも当然のように断言され、俺は目を見開いた。