逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 内心頭を抱えていると、エステリーゼの俺に対する評価があまりに低すぎるのを懸念したのか、子爵令嬢が俺の援護を始めた。

「だけど、ジュード様は貧乏子爵家の私にも優しく声をかけてくださるわ。エステルと一緒にいるときは確かに少し口が悪いようだけど、あなたの扱いは丁寧だった。本当にエステルのことが嫌いだったら、もっとぞんざいに扱ってもおかしくはないと思うの。現にエステルは舞踏会で壁の花になることはないでしょう?」
「あ、あれは……筆頭公爵家だから挨拶回りが多くて、それで付き合わされているだけよ」
「そうかしら。あなたが他の男からダンスを申し込まれるのが嫌なのではなくて?」
「やだもう、イレーユったら恋愛小説の読みすぎよ。わたくしとあいつに限ってそんなことないったら!」

 俺は心臓を剣で突き刺されたように、がくりとうなだれた。
 間接的とはいえ、彼女の口から直接放たれた言葉の数々は、想像以上に心のダメージを与えた。

(薄々気づいてはいたが……まさか一ミリも期待されていないとは……)

 嫌われている自覚はあった。婚約の顔合わせのときから彼女とは口げんかばかりしているのだから当然だ。
 そして俺は彼女の誤解を解けないまま、ずるずると謝罪する機会を引き延ばしていた。こんなのただの怠慢だ。婚約者ならば、すぐにでも彼女に許しを請うべきだった。