逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 そして婚約者の好感度はマイナスに振り切れたまま、エステリーゼを彼女の屋敷まで送り届けた帰りの馬車で俺はため息をついた。

「ジュード様。仲良くなられたいのなら、本日のような態度はお控えください」

 従僕のキールの苦言に、俺は刺々しく言葉を返す。

「それができていれば苦労はしていない」
「……さようでございますね」

 キールは俺の二歳年上で、兄弟のように育った。そのため、お互い直接口に出さなくても相手が何を思っているか、おおよそ察することができる。
 基本的にキールはいつも物静かに俺のそばに控えている。その彼があえて口に出したということは、それほど俺の態度が悪かったという証左だろう。

「他のご令嬢にするように、エステリーゼ様にも優しい言葉をかければ、きっとジュード様にも心を開いてくださいますよ」
「そんなこと、わかっている!」
「…………」
「……すまない。言い過ぎた。不甲斐ない自分が許せなくて、君に八つ当たりしてしまった。君は俺を心配してくれているだけだとわかっているのに」
「いえ。いつか、わかり合える日が来るといいですね」

 本当にそんな日が来るのだろうか。
 彼女と穏やかに過ごす時間なんて、ただの幻想ではないだろうか。

(俺が変わらない限り、おそらくエステリーゼが俺に笑顔を向けてくる日は来ないだろう)

 今日こそは、と毎回決意するも成功した試しがない。