逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 ある日、婚約者として一緒に招かれたパーティーで、彼女が纏っていたのはチュールを重ねた黄色のドレスだった。胸元には金色の刺繍がされた鳶色のリボンがあり、俺の色彩を取り入れてくれたのだとすぐにわかった。
 俺は生まれて初めて、薄い金髪と鳶色の瞳であったことを天空神に感謝した。
 エステリーゼの顔は渋々着せられたことがありありと出ていたが、渋々でもその色を纏ってくれたことが何より嬉しかった。
 内心の喜びをどう言葉で伝えようかと頭をフル回転させているところに、彼女が感想を求めるようにジッとこちらを睨んでいることに気づく。

(……これ以上の失態は命取りだ。褒めるなら慎重に言葉を選ばねば……)

 そのドレス、本当によく似合っている。俺の色を着てくれて心から嬉しい、と。
 だが口から出たのはまったく違う言葉だった。

「馬子にも衣装だな」
「…………悪かったわね!」

 いくら焦って言葉選びを間違えたと言っても、これはない。案の定、エステリーゼは真っ赤になって駆け出してしまった。
 俺はまたしても失敗をしたのだ。
 呆然と突っ立っている俺の元に、父上とウォルトン伯が「……恋する相手に素直になれないのは男の性だ。まだ時間はある。頑張りなさい」と労ってくれたことが唯一の救いだった。