逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「……それを言うなら、君こそ俺に何か言うべきではないか?」
「なんですって?」
「人を人と思わない言動をする令嬢なんて君以外にはいないだろう。子ども同士とはいえ、貴族社会で生きていくなら、本音と建前は使い分けるべきだ。俺相手だからよかったものの、一歩間違えれば君の家族が困ることになっていたぞ」

 まずは謝罪が先だ。そう頭ではわかっていても、エステリーゼと二人だけのお茶会という状況に心拍数は速くなる一方で、伝えようと思っていた言葉が思い出せない。

(なぜだ。俺の口は余計な言葉はすらすら出てくるくせに、どうして肝心な言葉が出てこないんだ!? これでは余計嫌われるに決まっている!)

 内心動揺して慌てふためく俺に、追い打ちをかけるように凍てつく声が返ってきた。

「へぇ、そう。つまり、今日はわざわざ説教をするために呼びつけたのね? それなら時間の無駄だったわ。あなたに言われなくても、貴族のマナーは知っているもの。先にひどいことを言ったのはあなたじゃない。だったらまず、先に謝るべきはあなたよ。……わたくし、気分がすぐれません。これで失礼させていただきます!」

 捨て台詞とともに、エステリーゼは早足でその場を後にした。