逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 とはいえ、嫌われてしまった相手に好いてもらうには、どうしたらいいのだろう。
 こんなの初めての経験だ。
 そもそも初対面の印象が最悪すぎた。あの印象を払拭するのは容易なことではない。

(くっ……早く何か喋らなければ! このままでは一言も発せないままお茶会が終わってしまう。それだけは何としてでも避けねば……)

 高級茶葉を使用した芳しい香りを堪能する余裕などなく、俺は一気に紅茶を飲み干した。我ながら優雅さのかけらもない振る舞いだ。けれど、こうでもしないとせっかく振り絞った勇気がしぼんでしまう。
 すぅっと息を吸い込み、俺はティーカップをソーサーごと大理石のテーブルに戻した。

「君はお茶会の場で、話題を提供することもできないのか。少しは他の令嬢を見習ったらどうだ? 君も貴族の一員ならば、嫌いな相手でも会話ぐらいはやってのけるべきだと思うが」

 言い終わってから間違いに気づいたが、すでに後の祭りだ。
 媚びるだけの令嬢相手ならともかく、先ほどの言葉は婚約者にかける言葉では断じてない。

(嘘だろう……? 俺はなんでこんなにも素直になれないんだ?)

 自分自身に問いかけるが、当然答えなど返ってくるわけがない。
 呆然となる俺に、エステリーゼは檸檬色の瞳を細めてこちらを見つめてくる。

「まぁ。あなた、嫌われている自覚はあるのね。だったら、先に言うべき言葉があるのではなくて?」