逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

(……羞恥で死にそうだ。なんなんだ、あの夢は。悪夢か。……いや待て、夢の中のエステルはとても可愛かった。それは間違いない)

 どうやら、頭が相当混乱しているらしい。
 ここは深呼吸だ。息を深く吐き出し、大きく吸い込む。それを三回、繰り返す。
 落ち着いて、夢での出来事を反芻する。だが、俺はすぐに後悔した。

(これ、恥ずかしさで死ぬやつでは……? さっきから動悸がすごいことになっているんだが。あれは本当に夢だよな? 昨日の出来事とか言わないよな?)

 だんだん自分の記憶に自信がなくなってくる。
 そういえば、夢は自分の欲望が映し出されることもあるらしい。

(あんな風に可愛がられることが、俺の欲望……だと? そんなバカな)

 にわかには信じられない。信じたくない。
 それから数分後。布団の中に籠城していた俺は、起こしに来たキールに掛け布団を剥ぎ取られ、朝の支度をさせられた。周囲が優秀すぎるのも困ったものだ。

 ◆◇◆

 約束の時間、ウォルトン伯爵家の邸宅で、俺は婚約者とのティータイムを楽しんでいた。無事に婚約者となって信用を得たためだろう。