逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 俺の愛は重すぎないだろうか。毎回少し照れてしまう夫に呆れていないだろうか。もう聞き飽きたのではないだろうか。多少の不安はよぎるが、彼女の心を繋ぎ止めることができるならば、俺は何だってしよう。
 精一杯の愛の言葉を君に。ひとつひとつ、想いを込めて。

「──エステル、君を心から愛している。どうかこれからも、ずっとそばにいてくれ」

 最後まで視線を逸らさず、静かに見つめる。
 しばらくして、花がほころぶように、ふわりとエステリーゼが笑った。

「ふふ、よくできました。わたくしも──」

 彼女の声がふっと遠くなる。まるで引いていくさざ波のように。
 続きが聞きたいのに、視界がすべて暗闇に飲み込まれる。
 闇に閉ざされた世界で、必死に腕を伸ばす。だが何もつかめない。初めから、そこには何もなかったかのように。

(どこだ、エステリーゼ……ッ!!)

 力一杯叫んだ瞬間、俺は目が覚めた。

 ◆◇◆

 朝日がまぶしかった。
 ちらりと横を見やる。当然ながら、そこには誰もいない。
 俺は無言のまま布団を頭から被った。とにかく光が届かない場所に逃げたかった。