逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 ぎゅっと目をつぶる。背に腹はかえられない。この体では、彼女を抱きしめることもできないのだ。やれることは全部やってみるべきだ。
 俺はじっとエステリーゼを見上げた。

「好きな子にひたすら愛を伝えるんだ。言葉で」
「……愛」
「愛の言葉を捧げ、相手がそれを受け入れると、呪いが解ける。少なくとも、この絵本ではそうだった」
「ふうん。だったら、そんなに難しい話じゃないわね」
「……は?」
「あなたはわたくしが好き。わたくしもあなたが好き。愛の言葉を伝えて、何の問題があるというの?」

 好きという単語に動揺した俺は、全身が沸き立つような衝動に駆られた。

(す、すすすす、好き、だと……? いや、夫婦なのだし、今さら驚くほうがおかしい。そんなことはわかってる。でも、エステルから好きだと言われた! これで喜ぶなというほうが無理だ)

 しかし、軽々しく口に出してもよい言葉かと問われると、返答に迷う。
 現に、前振りなく言われたせいで、俺の心臓はこのまま壊れるのではないかというぐらい騒いでいる。え、どっちだ……?