「もう、何を言っているの。その体で歩けるわけないじゃない。ドアの取っ手も届かないでしょ。いいから、つかまっていなさいな。絶対、落としたりしないから」
「…………」
屈辱だ。成人男性が、手のひらの上に乗せられて運ばれるなんて。
しかし、自力で他の部屋に移動できないのは純然たる事実。ここは心を無にするしかあるまい。
エステリーゼは細心の注意を払って、仏頂面の俺を書斎まで運んでくれた。
絵本が収められた箇所は、子どもの背でも届く高さに集められている。
「どの絵本? 結構、種類があるけど」
「確か、妖精が表紙の……。あの緑の絵本だ」
「わかったわ。少しここで待っていて」
エステリーゼは絵本を取って戻り、一人がけのソファに腰を下ろした。ついでに運ばれた俺を、自らの膝の上に乗せて。
(……はっ、破廉恥だ! 君には恥じらいというものがないのか!?)
バタバタと暴れた弾みで、指先が柔らかな太ももに触れてしまう。
俺は両手両足をピーンと伸ばしたまま、固まった。薄着で極寒の外に放り出され、氷漬けにされたかのように。
(くっ……!)
全力で抗議したいのに声にならない。
「…………」
屈辱だ。成人男性が、手のひらの上に乗せられて運ばれるなんて。
しかし、自力で他の部屋に移動できないのは純然たる事実。ここは心を無にするしかあるまい。
エステリーゼは細心の注意を払って、仏頂面の俺を書斎まで運んでくれた。
絵本が収められた箇所は、子どもの背でも届く高さに集められている。
「どの絵本? 結構、種類があるけど」
「確か、妖精が表紙の……。あの緑の絵本だ」
「わかったわ。少しここで待っていて」
エステリーゼは絵本を取って戻り、一人がけのソファに腰を下ろした。ついでに運ばれた俺を、自らの膝の上に乗せて。
(……はっ、破廉恥だ! 君には恥じらいというものがないのか!?)
バタバタと暴れた弾みで、指先が柔らかな太ももに触れてしまう。
俺は両手両足をピーンと伸ばしたまま、固まった。薄着で極寒の外に放り出され、氷漬けにされたかのように。
(くっ……!)
全力で抗議したいのに声にならない。



