その瞬間、頬にツーッと伝うものを感じて、私は今泣いていることに気がついた。
今まで、どんなに辛くても涙が出なくて、泣けなかった。
辛くて…辛くて。
私1人がなんでって、孤独だった。
わかってくれた。
てんちょに握られた手が、温かかった。
「悪かったな。辛いこと、言わせて」
「うう、ん。だいじょーぶ」
「ハナタレ」
「えっ!」
「ウソだよ。泣くな。泣かれると困る」
「泣かせたの、てんちょだもん…」
「はいはい。そーでした」
てんちょはいつも、温もりをくれた。
私が家出をして迷った時も、手を差し伸べてくれた。
こうやって、手を握って話を聞いてくれた。
「ありがとう…」
てんちょに出会えて、よかった。


