泣きたいのに、涙が出なくて。


嬉しいのに、笑えない。




私は生まれた時から、人間としての感情を表に出すという行為が備わっていない。





「小兎《コト》。今日もイイコにしてた?」

「うん」


「そっか。僕はね、もう何もかも投げ出したい。イイコでいるのが疲れたんだ」



「無理に、笑わないで」

「…小兎には、ウソがつけないね」




今日もミカ君は、悲しい顔をして私を抱きしめる。



それを受け入れて、もうすぐ4年になるのかな。





出会った頃のミカ君は、悲しい顔をする人ではなくて、むしろいつも笑ってた。





私の兄、一織《イオリ》と仲が良く、高校に入ってすぐ友達ができたと、家に連れてきたのがミカ君だった。





ミカ君の家柄はよくて、周りがそれに媚びてくる中、人当たりのいいお兄ちゃんは、1人でいるミカ君を強引に連れ回していたんだとか。