「…エマ」


レオのことを考えているといつの間にかレオが私の隣に座ってもの欲しそうな目で私を見ていた。

彼もまたこうするしかないのだ。


「エマの方が綺麗だ。もう、我慢できない」


苦しげな吐息を吐きながら私をキツくレオが抱きしめる。
私を求めているフリが随分上手くなったものだ。

それでも偽りだとしても私は満たされるし、欲しいと思ってしまう。


身だしなみを整えてもらったばかりなので拒もうとしたが、そんな力は湧かなかった。
また治してもらえばいい。彼には素敵で偉大な魔術がある。


そう思ったのだが。


「まって…」


瞼が急激に重たくなる感覚がしてレオの胸を軽く押した。


「ご、めん。…わた、し、もう」

「ああ、もうそんな時間か」


徐々に意識が薄れていく中でなんとか言葉を発するが伝えたいことがうまく言えない。
だが、レオはそれでも理解した様子で切なげな表情を浮かべた。


「おやすみ、エマ」


そしてレオは私にそう囁いた。

この意識が遠のく感覚は夢から覚める感覚だ。