「ああ、綺麗ね」


やがて触れるだけの短いキスを終えると名残惜しそうに離れたレオの美しい顔を見て私はうっとりとした。


冷たい印象のある美しいレオの顔に私の唇から移したレオの瞳と全く同じ色の真紅が扇情的でとても映えている。

こんな表情を浮かべているレオだが、彼も私の被害者であり、私を恨んでいる。

彼は我が国の魔術師専門学校を歴代最高成績で卒業した魔術師だ。何故か卒業後姿を消した彼だったが、姿を消して街を歩いている所を偶然私は見かけ、彼をここへ連れ去った。冷たい印象があるもののその美しい容姿と、幻であり、最高の魔術師である彼の存在が純粋に気になったからだ。

彼は魔術師として優秀であり、強い。先程も言ったが私もきっと彼に敵わない。なら何故彼を連れ去り、今も軟禁できているのか。

まず連れ去られた理由は2つ。
1つ、レオは自分の魔術を信じて自分の姿が絶対誰にも見えないと疑いもしなかったこと。
2つ、そうして油断しているレオよりほんの少し弱いだけの私が隙をついたこと。
この条件を満たせたのでレオを捉えることもそう難しくはなかった。

それでは今何故レオは普通の状態でも私に囚われ続けているのか。それは今彼は私よりほんの少し弱くなるように力を封印されているからである。

レオの右耳にのみつけられているルビーの小さなピアス。このピアスには強力な私の魔術が込められており、これを付けている限り私よりほんの少し弱くなるのだ。もちろん自分では取り外しはできない。それを取ることができるのは私だけだ。


最初こそ私の目的を聞くなり、私に怒りをぶつけ、その魔術で私を倒そうとしたが、私より弱いので私に押さえ込まれた。それでもレオは何度も私に挑んできて何度も本気の殺し合いをした。だがその内私を倒すことは今の状態では不可能と察し、今では私のいいなり、私に傅いている。

幻であり、最高の名を得た魔術師である彼がこの宮殿に軟禁されて、他の恋人たちと同じように愛を強要される。私を恨まずにはいられないだろう。