「メイクが上手くいかなくて…」


「メイク?そういえば最近するようになったよね」



采斗が私の隣にあぐらをかいて座った。私の顔を一瞬見つめてから、ふっと優しく微笑む。



「ん、可愛い。けど…どうして急に?優里はメイクなんかしなくても十分可愛いのに」


「あ、采斗…」




付き合ってからも采斗の甘い言葉は健在だ。というか…むしろ、前よりも拍車がかかっているような気がする。




「だっ、ダメだよ、甘やかさないで。
少しでも采斗の隣にいても恥ずかしくないようにって、今特訓中なんだから」


「…え?俺のため?」




采斗が驚いたように一瞬、大きく目を見開いて。次の瞬間




「っわ!」




思い切り私に抱き着いてきた。




「ちょっと…采斗!?」



「ん…やばい。すっごい嬉しいんだけど」




顔を上げた采斗が、壊れ物に触れるように私の頬をなぞって。



チュ、とまぶたにキスを落とす。





「俺優里のそーゆうとこ、好きだけど…
でも無理しなくていいんだよ?
メイクしてもしてなくても、俺はどんな優里ももれなく大好きなんだから」



うっ…甘い、甘すぎる…!




真っ赤になった顔を隠すように、私は俯いた。





「あ、采斗、甘すぎるよ…」


「好きな子甘やかして何が悪いの?」




采斗の、私の肩に置かれていた手に力がこもって。




「きゃっ…!!」





ドサッ…と押し倒された。