「ちょっと優里、いつまでここにいる気?さっさと帰りなさーい!」




信じられるだろうか。


なんとこれ、傷心で帰ってきた娘に母親がかけている言葉である。




「やだよ!ていうかここが本当の私の家だし!」



「今の本当の家は采斗くんと住んでるマンションでしょ?
すぐに帰ってきたら夫婦生活の予行練習にならないじゃないの~」



「それはお母さん達が勝手に言ってるだけでしょ!?
采斗と夫婦とかありえないから…!」


「そうなの?
優里、昔はあんなに采斗くんのこと大好きだったのに」


「…っ」









たしかに私は昔、采斗のことが好きだった。ていうか、初恋だった。




でもそれは、采斗が芸能人になって、学校中の人気者になって。




“あんなフッツーの子が采斗の幼なじみなんてもったいなーい、不釣り合いすぎて采斗かわいそー”



そんな陰口をたたく女子たちの声を聞いた時、この想いは消さなくちゃいけないと思った。



采斗のことを好き、なんて。私には身分不相応なんだ。