ドアを少しだけ開けて、素早く体を滑り込ませる。



なぜか不機嫌そうな采斗が、腕組をして壁にもたれていた。




「采斗、どうしたの?なにか落とした?」



外にいる2人に聞こえないように、細心の注意を払って小声で聞く。



「落としてないよ」



「じゃあ何だったの?今の音」



「なんだったの?って…」




つかつか歩み寄ってきた采斗が、私の腕をつかむ。そして




「きゃっ…」




くるりと視界が反転して、気づいたらベッドに押し倒されていた。



はじめて触れる采斗のベッド。ふわっと采斗の香りがする。



私に覆いかぶさるようにした采斗が、真上から射抜くように私を見た。





「それ、こっちのセリフ。一体なんなの?さっきのアレ」



「アレ…?」



「好きな女の子が他の男に触られまくってんの見て、平常心保てる男がいると思う?」




もしかして、さっき一岡に髪の毛をグチャグチャにされているところを見てたの?