「…ん。おいしい…!」


「ほんと?ほんとにほんとにほんと!?」


「ほんとだって」


「でも采斗に言われても説得力ないっていうか…采斗の方が絶対料理うまいし…しかも芸能人って毎日フォアグラとかキャビアとか三ツ星レストランとか食べてるんじゃ…」


「どこのセレブだよ」




采斗が丁寧にハンバーグを切り分けながら呆れたように笑った。




「優里ってそんなネガティブだったっけ?昔はもっと前向きだったような…」


「…采斗こそ、昔とすごく変わったよね。まさか芸能人になるなんて思わなかった」



采斗は気弱で泣き虫で、どちらかというと人見知りで恥ずかしがり屋で。


中2の夏に街でスカウトされたって聞いた時も、まさかそこから本当に、芸能事務所に入るなんて思いもしなかった。



見ると、複雑そうな表情で私を見ている采斗。



「あ…ごめん。でも、今は采斗にとって天職だなって思ってるよ?演技もすごく上手いし!」


「…ありがと」


「…ねえ、采斗は何で俳優になろうと思ったの?」



芸能界に入るまで、采斗から俳優になりたいなんて言葉、一回も聞いたことなかったし…。



ずっと気になっていたことを聞くと、采斗は少し考えるように目を伏せて、そして私を真っすぐに見ると




「ベランダでちょっと話さない?」