「ちょっと都さん、優里のこと脅さないでよ。大袈裟すぎだし」


「何も大袈裟じゃないわよ。それよりもう時間だから出るわよ」



「わかってる」




軽くため息をついた采斗が、ゆるく私の頭を撫でた。




「じゃ、行ってくるね。今夜は遅くなりそうだから」




玄関の方に消えた采斗を追おうとした都さんが、ふと足を止めて振り向いた。




「YUUから突然一週間休みをくれと言われた時は驚きました。引っ越しの為、なんて。

事のほか強く言うものだから死ぬ気でスケジュールを調整したけど、その分これから暫くは仕事続きです。

YUUに会うことはかなり少なくなると思うけど、悪く思わないで下さいね。


…あとさっきの言葉、忘れないように」




そしてクイッと眼鏡を持ち上げると、身を翻して玄関の方に消えた。




ベージュのスーツを完璧に着こなし、黒くサラサラの長い髪、眼鏡の奥の理知的な瞳。



いかにも仕事出来そうって感じだ。いや、実際できるんだろうけど。




そして…



もしも私が粗相して同居がバレるような事態になったら…





確実に殺られそう……。