「ちょっと顔見られちゃ困るからね。大騒ぎになってその子に迷惑かけたくないし」



…まるで誰かに会いにいってきたかのよう口ぶり。



そりゃそうか。


だって采斗は芸能人。それも飛ぶ鳥をおとす勢いの超人気俳優。



恋人の1人や2人や3人や4人いるんだろう。



そっか、どこの女優さんかモデルさんか知らないけど、夜のデートを楽しんできたってわけね…ふーん、そっか。




「…優里?どうしたの?急に黙り込んで」



采斗が私の顔を覗き込む。



「…らお」


「ん、ラ王?優里ラーメン食べた…」


「違うよチャラ男って言ったの!夜通しデートで朝帰りなんて芸能人とはいいご身分ですね!でもね、言っとくけど采斗だって芸能人である前に高校生でしょうが!朝帰りとかホイホイッとして許されるわけ!?」


「え?朝帰り?ホイホイ?」


「もういいっ!ばかー!!」


「っ、待ってよ優里」




走り出そうとした私の腕を、慌てたように采斗がつかむ。




「昨日から何でそんなに怒ってんだよ」


「だから…別に怒ってないよ?ただ私は高校生としての健康で文化的な…」






「優里?」





背筋が凍る。





「何やってんだよお前。ん?柏木と…誰?」





稟琉と一岡の…声。




終わった……