エレベーターにのって一階までおりる。


その間私の頭を占めているのは采斗のこと。




…采斗、もしかしてもう帰ってこなかったりして…?


でも、そっちの方がいいのかもしれない。



采斗にとっても…私にとっても。



エレベーターからおりて、エントランスを抜けて、自動扉から外に出る。



「これでよかったんだよ…」


「何が?」


「え?」




顔を上げるとサングラスに深々とした黒い帽子、マスクをした不審者が目の前にいた。



も、もももしかしてYUUがここにいると嗅ぎ付けた不審者!?野次馬!?変態!?





「ちがっ違いますここには住んでませんのでお引き取りを…!!」



「ん?何言ってるの優里」




え?どうして私の名前。ていうかこの声って…




目の前の不審者がゆっくりとサングラスとマスクを外す。



その下から現れた、世間で国宝級ともてはやされる整った顔。





「おはよ、優里。朝ごはん作ってなくてごめんね」



「采っ…!!」




采斗!!と言いかけて慌てて自分の口を両手で抑えた。



すぐに周囲の確認。よかった、誰もいない…




ホッと胸を撫でおろす私を不思議そうな顔で見下ろす采斗。




「どうしたの優里」


「どうしたのじゃないよ…どこ行ってたの、こんな朝早くから」


「あーいいでしょ、この変装」



采斗が帽子のツバを持って、悪戯っぽく笑った。