「あのねっ!今朝もだけど!芸能界ではこういうの常識なのかもだけどっ!私は一般人なんでっ!そんなギョーカイ人みたいなノリで接してくるのやめてっ!!」



「は?ギョーカイ人みたいなノリって…こんなこと優里以外にはしないけど」



「そ、そーゆうのもだよっ!そーゆうこと言ってからかうのやめてよ、もう!!」




綺麗な女優さんやモデルさんにモテモテであろう采斗とは違う、私は人生でまだ一回も彼氏いたことないんだから…!刺激が強すぎる!!




ふ、と采斗が余裕そうな笑みを浮かべた。




「もしかして優里、照れてるの?かーわい」


「かかかかかわっ…」




日本全国各地にお住まいのみなさーん!!


私今…今…異性にはじめて“かわいい”と言われました…しかも誰よりもかっこいい人気俳優に!もちろん冗談ってことは百も千も億も承知ですけど…!!




「だからそーゆう冗談はやめてって……、っ!?」



そのときチョロ…と、視界の端に黒く動くものを捉えた。




見ると、黒い蜘蛛がそろそろと部屋を横断していた。しかも割と大きい。





「わっ…蜘蛛!」



「…え?あ、ほんとだ」





采斗は全然驚いた様子もなくそう言うと、ティッシュを取ってさっさと蜘蛛をつまんで、ササッと窓の外に逃がした。



あまりにテキパキとした一連の動作に唖然となる私。




だって、私が知っている采斗は、蜘蛛とか虫全般が死ぬほど苦手な男の子だったのに…