「ごめんね優里、遅くなった。
つかまれてたとこ…大丈夫?怪我してない?」


「う、うん…」




私の手首を優しくつかんで持ち上げた采斗が、心配そうに視線を落とす。




「……爪の痕ついてる」



「あ、采斗…何でここに…?」




ずっと連絡すらとれなかったのに。



私は突然目の前に現れた采斗に混乱していた。




チュ、と労わるように手首に唇を落とした采斗が、切なそうに瞳を細める。




「ほんとごめん…仕事に忙殺されて、スマホ壊れたりもして…っていうのは言い訳だよね。もっと早くこうして会いに来ればよかった」


「采斗…」






「何でYUUがここに!?」



突然の大声に耳がキーンとなった。



そうだ…この人たちがいるの一瞬忘れてた…!!




「あーもう、せっかくの久しぶりの優里との会話邪魔しないでよ」




采斗が心底鬱陶しそうな声を出す。




「お、おまえら…付き合ってるのか!?まさか乙藤竜生との二股!?こりゃー面白いことになるぞ!おい撮れ!」


「は?」




ガシッとカメラをつかんで無理やり下げさせた采斗の声は



聞いたことのないくらい冷たい音だった。