なぜか隣にいた乙藤竜生が肩を竦める。



そして私だけに聞こえる声量で



「優里ちゃん大丈夫?幼なじみのガキ俳優が大変なことになってるけど」


「え?」



乙藤竜生から采斗に視線をうつすと




「…!?」




なぜか物凄く険しい顔で私を見ていた。



そ、そんな…この間やってた探偵もののドラマで犯人を追い詰める時の100倍険しい顔してるよ!?




「あ、てかねーアヤ、明日の収録のことなんだけど…」


「…ん、“キングのブランチ”の?」




織原エマさんが采斗に話しかけて気を引いてくれたおかげで、なんとか采斗の険しすぎる視線から逃れることが出来た。


よかった…それにしても、あんな怖い顔しなくても…そんなに采斗の言葉を遮ったことが気に障ったのかな?




熱心に、明日収録があるらしい番組について話している采斗と織原エマさん。




今日初日が終わったばかりなのに、明日はテレビ番組の収録って、2人とも大変なんだな。




「去年撮影してた、近々公開される映画があるんだよ。2人が主役のね。その宣伝でしばらくはバラエティーの出演が多くなるんだってさ」



乙藤竜生が教えてくれる。




「そうなんだ…」




さすが押しも押されぬ人気俳優と、今一番勢いがある女優。



この舞台が初共演ってわけじゃないんだ…だからこんなに仲良いんだな。




楽しそうに話す2人を見て、ドク、と心臓が嫌な音をたてた。