「無理無理無理無理っ!!」




激しく首を横に振った私に、采斗が不機嫌そうな顔をする。




「なんで?」


「なんでって…采斗自分の立場わかってないの!?」


「立場?」


「采斗は国民的人気俳優なんだよ!?」


「そうなの?それ以前に優里の幼なじみで今は婚約者なんだけど。婚約者と一緒に住んで何が悪いの?」




ダ メ だ ー!!



全然話が通じないよこの芸能人!!!




私はクラクラしてきた頭をおさえて、なんとか靴を履いた。




「とにかく私もう学校行くから…」




そう言ってドアノブに手を伸ばした私の肩を、采斗が後ろに引っ張って



振り向いた私の唇に、ちゅ、と柔らかな感触。





「いってらっしゃい、俺の奥さん」




気づいたときには、采斗が嬉しそうに微笑んでいた。