「そうー? 樹くん、楽しそうに笑ってるように見えたからさ」

「だから誰にでも……」

「あ! もしかして栞みたいなおとなしそうな子が実は好みなんじゃない!? 自分にはないものを求める的なさあ」

「えっ……! ないない、絶対ないからやめて。そもそも私が男の子と付き合うとか、無理だよ」


 必死に私が否定すると、琴子は表情を曇らせた。


「あー、そっかあ……。中学の時みたいなことがあったら、怖いよね。なんかごめん、テンション上がっちゃって」

「――ううん。謝らなくていいよ」


 楽しそうに話していた琴子に、私の暗い過去を思い出させてしまって、こちらこそ申し訳ない気持ちになってしまった。

 中学生の時は、私はここまで引っ込み思案じゃなかった。

 誰とでもそれなりに打ち解けられたし、友達付き合いだって人並みにできた。

 そんな私には好きな男の子がいた。

 その時から私は読書が好きだったんだけど、彼も私と同じように本好きだった。

 一緒に図書室に行ったり、本の貸し借りをしたりして、とても楽しい時間を過ごせる相手だった。