「栞もそのシール、よく使う物に貼ったら?」

「よく使う物……」


 シールが貼れるようなよく使う物って何かな?

 うーん……。

 自分の身の回りの物を思い出していく私。

 あまり人の目に触れるものは、やっぱり私は恥ずかしくなってしまうのでダメだ。

 いろいろ思い浮かべていくうちに、私はいい物があることを思いついた。


「じゃあ、いつも使っている本のしおりに貼ることにするね」


 しおりならいつも本に挟んでいるし、あまり人の目には触れない。

 だけど私は毎日必ず使う。


「あ、いいじゃん! 栞らしいね」


 樹くんもいい案だと思ってくれたみたいで、テンション高めの声で言った。


「――うん。本を読むのが楽しくなりそう」


 あ、でもしおりに樹くんがいたら、本の世界から引き戻されちゃいそうだな。

 だって樹くん、本の中のヒーローよりも、今の私にとってはかっこいい存在だから。

 ……と、思ったのは内緒。

 その後コインゲームやエアホッケーなんかで遊んだあと、私たちは別れた。

 私は家に帰ってすぐに、本に挟んでいたしおりを引っ張り出してプリクラを貼る。

 優しそうに、だけどかっこよく笑う樹くんの隣で、顔を真っ赤にして引きつった笑みを浮かべる私。

 ――今見てもやっぱり変な顔だなあ。

 そう思ってしまった私だったけれど、樹くんと一緒に過ごした時間が、目の前に形として残っているということが、嬉しくて。

 私は本の続きを読もうとしたけれど、しばらく樹くんのことが頭から離れず、物語に入り込めなかった。