「栞ってゲーセンに行ったことある?」


 校門を出てから樹くんが私の顔を覗き込みながら尋ねてきた。

 い、いちいち距離が近い気がする。

 だけどとても自然な感じだし、やっぱり樹くんって誰にでもこうなのかなあ。

 きっとデートって言ったのも、あまり深い意味はない……よね。


「行ったことはあるけど、そんなにないかなあ……。ここ何年かは行った覚えはないよ」


 ゲームをやる習慣がない私にとって、ゲーセン……ゲームセンターという場所は疎遠だった。

 よく一緒に遊ぶ琴子も興味がないようだし。

 小学校の頃、家族で出かけた時にUFOキャッチャーで遊んだのが、下手をすると最後に行ったときかもしれない。


「そうなの? よし、じゃあ今日はゲーセン行こ」

「えっ……。でも私、ゲーム普段全然やらないから、すごく下手だと思うよ」


 できなさすぎて呆れられてしまうんじゃないかって、私は不安になる。

 だけど樹くんは、首を横に振りながらこう言った。


「大丈夫大丈夫! いろんなゲームあるから。ね、行こ」

「……う、うん」


 そこまで言われてしまえば、断るのも悪い気がした。

 私は樹くんに圧されるような形で、頷いてしまった。

 ――大丈夫かなあ、本当に。

 そう思いながらも、樹くんに連れられてゲームセンターへと辿り付いた私。