その次の日、樹くんは学校に来た。

 とても元気そうに見えたので、本当にサボりだったんだなって私は安心した。

 朝、樹くんは教室に入って私の顔を見るなり、笑顔で手を振ってくれた。

 ――そして。


「栞ー! おはー」


 と、大声で言ってくれた。

 教室でそんな風に誰かに声をかけられることなんてほとんどない私は、驚いて一瞬固まってしまった。

 だけど「お、おはよ……」って頑張って返した。

 すると樹くんは「うん」と満足そうに頷いた。


「あれ、樹って好本さんと仲いいんだ。なんか意外」


 樹くんの隣に立っていた、彼と仲のいい男子のひとりが、何気なくそう言った。

 ――だよね。

 私もそう思う。

 いつもクラスの中心にいる樹くんが、友達のいない私に大声で挨拶してくれるなんて。

 私だって信じられないくらいだよ。

 樹くんの友達の言葉に納得しつつも、少し寂しい気分になってしまう私。

 樹くんと私が関わるのは、不自然なことなのかなって思えて。

 ――だけど。


「なんで? 別によくね」


 樹くんはきょとんとして、友達に言った。

 さも不思議そうに。

 すると彼の友達は「あ、うん。別にいいんだけどさ」と樹くんに気圧されたように言った。

 ――樹くんのその言い方が、なんだかとても嬉しかった。

 仲良くしてもいいよ。

 一緒に居てもいいんだよって言われている気がして。