彼は私が知っている人だった。

 中学生の時に同じクラスになったことがある、影山悟くんだ。

 中学生の時は眼鏡をかけていた上に長めの前髪で顔が余り見えなかったので、あまり目立つタイプではなかったと思う。

 だけど高校になってからコンタクトデビューをしたらしいのと、髪型もおしゃれになっていて、かなり雰囲気が変わっていた。

 そう言えば、クラスの女子が「隣のクラスの悟くん、結構いいよね」と言っていた気がする。

 私と悟くんは、仲が良かった時期があった。

 ふたりで一緒に図書室に行ったり、下校したりすることもあった。

 ――だけど。


「……はい、これ」


 どんな顔を向けたらいいかわからず、私は俯きながら悟くんにバスケットボールを渡す。


「あ……ありがとう」


 ぎこちない声でお礼を言い、私からボールト受け取る悟くん。

 彼がどんな顔をしているかは、下を向いているので見えなかった。

 見るのが怖かった。

 ――中学生の時、私は悟くんのことが好きだった。

 そう、彼は私が生まれて初めて告白をしようと思った人。

 ラブレターに想いを綴った人。