そう思ったけれど、うまく言葉が出てこなかった。

 下手に気休めのように慰める結果にしたくない。

 私の心からの想いをちゃんと伝えるには、どうしたらいいだろう――。

 そこで私は「あっ」と、今ある物を持っていることを思い出した。

 鞄の中に入れていた、図書館ノートだ。

 私と樹くんをつなげてくれた、一冊のノート。

 私がやり取りの相手を樹くんだと知るずっと前から、彼の心と触れ合わせてくれたノートだ。

 今日、告白のお守りとして持ってきていて本当によかった。

 いつもは決して図書館からは持ち出さないのに。

 ――なんだか運命的なものを感じてしまう。


「栞?」


 鞄を漁り出した私を不思議に思ったのか、樹くんが名前を呼んだ。

 私はそれに答えずに鞄からノートを取り出すと、ベッドの隣に置いてあった丸椅子に腰をかける。


「そのノート……」


 鞄から取り出した図書館ノートを見て、樹くんが驚いたように呟く。

 私は無言で頷くと、ノートにペンを走らせた。

 あなたの顔も名前も知らない時から、ずっと本音を書けたこのノート。