――でも、一番苦しいのは樹くんなんだよ。

 こんなことでたじろいじゃダメ、私。


「……樹くん。大丈夫?」


 樹くんの傍らに立ち、屈んで静かな声で尋ねる。

 樹くんはベッドに横になったまま、首だけを動かして私の方を見ていた。


「うん。……今はね」


 「今はね」。

 樹くんのその言い方が悲しい。


「こんなとこ、見せたくなかったんだよ栞には。何も言わずにいなくなろうって思ってたんだよ。……あーあ、やらかしたわ」


 軽い口調でいつもの樹くんらしく言う。

 だけどかすれたしまった声に、彼の低下した生命力が垣間見えた気がして、切なくなる。


「え……嫌だよっ……! いなくなんて、ならないで!」


 ある日突然、樹くんがいなくなってしまった時のことを想像してしまって、私は叫ぶように言った。

 すると樹くんは、力なく笑った。


「もう栞も知ってるみたいだけど、だってどうせいなくなるからさ、俺。それなら栞には、俺が元気だった姿で覚えておいて欲しかったんだよ」

「で、でも手術は……」


 手術を受けて成功すれば治る可能性がある。