私はもっと早く気づきたかったと、心から思った。


「だからね、栞ちゃんのことは本当に好きなんだなって思ったよ」

「えっ……?」


 お父さんの言っている意味が分からず、私は驚きの声を漏らした。


「もう恋を諦めたはずのに、それでも君のことを樹は好きになってしまったんだ。好きって気持ちが抑えきれなかったんだよ。栞ちゃんへの恋が、病気の恐怖よりも強いものだったんだね」

「……栞ちゃん。樹に恋をさせてくれて、ありがとうね」


 お母さんは涙声になった。

 私も堪え切れず、泣いてしまって何も言えない。

 すすり泣く私を、悟くんが優しくポンポンと肩を叩く。

 ――私だって、もう恋なんてできないって思っていたよ。

 でも樹くんを好きだって気持ちが抑えきれなくて、ついには告白する勇気まで出ちゃって。

 私には太陽みたいな存在の樹くんも、まさか恋を諦めていたなんて。

 もうすぐ死んでしまうかもしれないなんていう、とても重い事情を抱えて。

 ねえ、そんな君に私が少しでも光をあげられたのかな?

 病気の苦しみや怖さに負けないような恋の気持ちを、少しは与えてあげられたのかな?