君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

 やっぱり、樹くんのひょうひょうとした感じは、ご両親譲りなんだ。

 だ、だけど彼女って……。


「い、いえ私は彼女というわけでは……」


 お母さんには前に樹くんが否定していたのに……。

 それに悟くんは、樹くんが私のことを好きだとは言ってくれたけれど、まだ本人に実際言われたわけじゃないから、信じられない。

 ――しかし。


「え、でも彼女よねえ。そんな感じがするわ。この前会った時も思ったの」

「そうだね。そんな雰囲気で出るよ」

「え……?」


 私が否定したのにも関わらず、樹くんのお母さんとお父さんは、うんうんと頷きながら断言するように言う。


「最近本当に樹が楽しそうでね。やっぱり栞ちゃんのこと好きなの?って聞いたら、『秘密』なんて言ってたし」

「『秘密』って、もう肯定してるも同然だよなあ」


 意味が分からず呆気に取られている私に構わず、ご両親は話を進める。

 すると悟くんが隣で小さく噴き出した後、こう言った。


「いや、本当にまだ彼女じゃないよ」

「あら、そうなの? えー、もう樹ってば奥手ねえ」


 お母さんは心底残念そうに言った。