君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

 お母さんには以前にちょっとだけ会ったことがあるけど、確かにお父さんは初対面だ。

 爽やかだけど、どこかひょうきんそうな雰囲気があって、樹くんを彷彿させる。


「あ……。わ、私樹くんと同じクラスの、好本栞と申します。樹くんには仲良くしていただいています」

「栞ちゃん、そんなにかしこまらなくて大丈夫だよ。樹と同じで気のいい人たちだからさ。あ、おじさんおばさん、俺は救急車を呼んだだけだよ。栞ちゃんが樹と一緒に帰ってて、倒れた樹の傍にいてくれたんだ」


 緊張しながら挨拶をした私を、悟くんがフォローをしてくれた。

 お母さんは悟くんの言葉を聞くなり、樹くんによく似た瞳に嬉しそうな光を宿して、私に向かって笑った。


「まあ、そうだったのね! ありがとう、栞ちゃん! っていうかお父さん、前に話したでしょ? 樹に彼女っぽい子がいるって。この子のことよ~!」

「え、マジ? まさか、こんなかわいい子とはなあ。目が覚めたらちょっとからかってやるか~」


 にやりとお父さんは微笑む。

 このふたりのノリ、樹くんの調子とそっくりだなあ。