君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

 やっぱりかっこいい樹くんが私の彼氏になってくれるなんて、夢物語のように思えてしまって、「嘘? 本当に私のことを?」と思ってしまう。

 ――だけど、確かなことはひとつある。

 樹くんが私を好きでもそうじゃなくても、私が彼が大好きだということ。

 好きで好きでたまらないということ。

 そんな樹くんが、何もしなければこのまま死んでしまうなんて、耐えられなかった。

 生きる望みがあるのなら、手術を受けて欲しいよ。

 例え今までの記憶を、全部失ったとしても。

 心から私はそう思ったんだ。


「わかった。私、樹くんと話してみるね」

「ありがとう、栞ちゃん」


 悟くんは力なく笑って私にお礼を言った。

 だけど私は首を横に振る。


「ううん。私だって樹くんがこの世からいなくなっちゃうなんて、耐えられないから。もっと生きて欲しいって心から思ったの」


 はっきりと悟くんに向かって言った。

 悟くんの表情に、ちょっと嬉しさが入り混じった気がした。

 その後、樹くんはしばらくの間目を覚まさなかった。