何て書いたのを消したんだろうと、目を凝らして見てみると、「病気」とか「手術」とか、不穏な単語が浮かんで見えた。

 え……?

 まさか重大な決断って、病気に関すること?


「どうしたの栞。ノートをじーっと見ちゃって」

「……! なんでもないよ」


 ノートをガン見している私を不審に思ったのか、琴子が尋ねる。

 私は作り笑いを浮かべて慌てて否定した。

 なんとなく、他の人には言わない方がいい気がしたから。

 だって消してあるってことは、彼は私に伝えるかどうか迷った上に、やっぱりやめたってことだ。

 それにそもそも、彼が病気だって決まったわけじゃないし。

 ……あ! もしかして小説の話かも。

 最近ヒロインやヒーローが病気になって亡くなる悲恋物が流行ってるから、その感想とか紹介だったのかも?

 うん、きっとそうだよね。

 彼が病気だとは思いたくない私は、そう思い込むことにしたんだ。